以前から漫画が原作のアニメを鑑賞していて、ずっと気になっていたことがある。
たとえば以下に示した『パンプキン・シザーズ』のセリフを見ていただこう。原作、アニメともに同じシーンである。やや細部に記憶違いがあるかもしれないが、大筋は合っているのでご容赦を。
・原作
「軍で麻薬市場を経営しようというのか?」
・アニメ版
「軍でヒンメル市場を経営しようというのか?」
どうだろうか。原作で麻薬だった部分が“ヒンメル”という固有名詞に置き換えられている。このシーンだけでなく、該当する単語の出てくる場面すべてが同様だった。ちなみに私はドイツ語に詳しくないが、ヒンメルとは「天国」「空」を意味するらしい。
続いて『ガンスリンガー・ガール』も原作とアニメ版を比較してみよう。
・原作
「だったら私をさっさと薬漬けにしたらどうです?」
・アニメ版
「だったらさっさと私の条件付けを強化したらどうです?」
といった具合になっている。本作は「薬物投与によって少女たちの精神をコントロールして暗殺者に仕立て上げる」という非情な設定が大きな特徴だが、より婉曲な“条件付け”でお茶を濁しているようだ(この用語自体は作中に存在している)。
この両者を見てみると、原作ファンとしては少なからず違和感がある。とりわけ『パンプキン・シザーズ』のアニメ版では、原作を知らない視聴者を完全に置いてけぼりの印象があった。話の流れや画面上の絵から、視聴者が自力で「ヒンメル=麻薬」と推測しなければいけないからだ。麻薬に蝕まれる社会的弱者が主題のエピソードだっただけに、このハンデは大きい。
ひょっとしてアニメ業界には「NGワード一覧」のようなリストがあって、薬物関係はすべてストップがかけられるのだろうか?
そのあたりの疑問を確かめるべく、アニメ業界の関係者さんに話を聞いてみた。それによると、まずアニメ業界でNGワードの統一基準はないそうである。じゃあNGかどうかを誰が決めているかといえば、おおむね制作者ではなく放送局側らしい。
つまり作品によっては、原作で「麻薬」だったのを、そのままアニメ版で使用できるケースもあるということだろう。たしかに、そうでもなければ麻薬捜査官が主役の漫画は永遠にアニメ化できなくなってしまう。いくら何でも憲法で表現の自由が保障されている以上、最初の仮説には無理があったようだ。
そういえば思い当たる漫画原作のアニメが、ほかにもあった。
・『無敵看板娘』の茅原先生 → 原作ではすぐに自殺未遂をするキャラだったが、アニメ版では「辞表を書く」設定に変えられている。
・『さよなら絶望先生』の糸色先生 → 原作にあった自殺癖はアニメ版でも採用。それどころかOPアニメでさえ首を吊っている始末。
これなど、局側の判断で表現が分かれたケースと言えまいか。どちらも原作漫画では「すぐに自殺したがる困った教師」という設定だが、アニメ版での扱われ方は対極と言っていい。
こうして考えると、原作漫画をただ動画にすればアニメ版の完成!とは言えないようである。原作版の面白さをできるだけ殺さず、局側のチェックに引っかからない表現を模索し、なおかつ視聴者の反応も気にしなくてはいけない。そんな状況に置かれながら奮闘しているアニメ制作現場の皆さんには、心から敬意を表したいと思う。



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