少女漫画好きで、この作家の名を知らない人はほぼいないとってもよい超ベテラン・一条ゆかり。
長寿作でライトタッチのコメディ『有閑倶楽部』のイメージが先行しがちな一条氏ですが、本当のところ、むしろこの人が得意とするのはどろどろとした人間関係が入り混じる劇的でへヴィな恋愛ドラマ。
というわけで、本日のおすすめは現在「コーラス」(集英社)誌上で連載中の一条ゆかり作『プライド』。こちらはまさに一条ゆかりの本領発揮ともいえる愛憎入り混じったドラマチックな作品です。
まずは軽くストーリーをおさらい。
裕福な家庭に育ち美貌と才能に恵まれ、オペラ歌手を夢見るお嬢様・浅見史緒。
一方、飲んだくれでお金にだらしない母の元で育ち、学費・生活費を自身のバイトでまかないながら音大に通う苦学生・緑川萌。
この二人の出会いから物語は始まりますが、当然のごとく、萌は史緒を妬み、史緒はそんな萌を鬱陶しく思います。
しかし、突然、父の会社が倒産し、オペラ歌手への道を絶たれてしまった史緒。
優勝者にはイタリア留学の権利が与えられるコンテストにのぞみをかけて出場しますが、同じくコンテストに出場していた萌に浴びせられた言葉で心のバランスを崩し敗退。優勝は萌に奪われてしまいます。
その後、この憎みあう二人が同じ店で史緒は歌手・萌はホステスとして働くことになります。
しかし、店の余興で歌うことになった二人は自分たちの思いとは裏腹に見事にいきのあったデュエットが奏でることになるのです。
嫌いあいながらもお互いの音楽がぴったり合うと知った二人は…?
望んでいないものすら全てをあたえられた史緒と望むものは自分で手に入れるしかなかった萌。
貧乏になってもみじめでもプライドだけは失うまいとする史緒と、のし上がるためならプライドも平気でぽいと捨てる萌。
この二人に様々な人間が絡んで、その音楽も恋愛もドラマチックに展開していくわけです。
特筆すべきは主人公のライバル・萌。
彼女は、一見おどおどして自信がなさそうで、だけど、よく気が利く優しい女の子。
好きな男性や自分に優しくしてくれる人の前では、一途で素直で本当にかわいらしい女性なのです。
しかし、ひとたびくやしい思いをすると、彼女の中でスイッチが切り替わります。
モードが変わった彼女は、人をだまし、男を誘惑することも平気。気に入らない人間を卑怯な策でおとしめるなんてこともいとも簡単にやってのけます。
普通に考えれば、こんな二重人格の女の子、そうそういないだろうとも思うのですが、漫画の中で描かれる彼女の生い立ちを見ると、「こんな風に育つのも当然だよなあ…」「この子はこういう生き方しかできない不器用な子なんだな」と、なぜか納得してしまう。やっていることはまさに悪女と呼ぶにふさわしいのに、なぜか彼女を憎めず共感してしまう。
それは、突拍子もないようでいて、人間の描き方にはきっちりとリアリティがあるから。
これぞ、ベテラン・一条ゆかり氏のなせる業なのでしょう。
この『プライド』実は2009年公開予定ということで映画化も決定しているのです。
映画・原作ともに今後の展開から目がはなせません。
どうしようもない悪女だけれど、できれば萌には幸せになってほしいものです。
■作品データ 『プライド』
・作者 :一条ゆかり
・出版社 :集英社
・刊行状況:8巻まで(続刊)
■評点 - 『プライド』
画力 :★★★★★
物語 :★★★★★
独創性 :★★★☆☆
総合評価:★★★★☆



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