マンガ好きライター陣が執筆する日刊マンガ(漫画)ニュース&レビューブログ!
   

今回ご紹介する作品は手塚治虫の異色作『MW-ムウ-』。

MW(ムウ) (1) (小学館文庫)

原作は30年以上前の漫画ですが、2009年に玉木宏、山田孝之らの出演で映画化が決定している作品なのでタイトルをご存じの方は多いかもしれませんね。

★以下の記事(段落部分)には一部ネタバレが含まれます。物語の結末に関わる部分には言及しませんが、希望されない方は読み飛ばすことをお勧めします。

◆あらすじ

結城美知夫は歌舞伎役者を兄に持つ美青年。大手銀行での出世を約束されたエリートの彼には、連続誘拐犯という裏の顔があった。
犯罪を犯すたびに教会の神父・賀来の元を訪れて懺悔を繰り返す美知夫。しかしそれは罪を悔いて神の赦しを乞うためではなく、肉体関係にある賀来を挑発し翻弄して楽しむためだった。

美知夫と賀来には、拭い去れない過去があった。
15年前、沖縄近海の小さな島で外国の貯蔵庫から毒ガスが漏れて島民が全滅したのである。
その場に居合わせながら奇跡的に生き延びた二人だったが、美知夫は毒ガス・MW(ムウ)によって脳を冒され、道徳心を失ってしまっていた…。

事件の関係者を次々に死に追いやりながらMWの行方を捜し求める美知夫。神父としての義務と美知夫への愛憎から、彼を告発できないまま深みにはまっていく賀来。
二人の運命は…。

1976年9月から1978年1月まで『ビッグコミック』(小学館)にて連載された作品です。

この作品が書かれた昭和40年代半ば~50年代半ば。現在30代後半の人たちが生まれて子供時代を過ごした時期の日本は平和と繁栄を謳歌していましたが、世界はアメリカとソ連をそれぞれ頂点とする東西に分かれた冷戦の真っ只中。この連載が開始された1976年の4年前(1972)までは沖縄はアメリカの統治下にあり、つい1年前までは泥沼のベトナム戦争が繰り広げられたりと、どこか影のある時代でもありました。

30代後半の読者ならばピンとくる政界のスキャンダルのパロディ(登場人物も元首相の名前のアナグラム)だったり、「ジュク(新宿)」「ナオン(女)」など現在では使われなくなった俗語や、今のセンスでは古くさいセリフもありますが、扱っているテーマやモチーフは化学兵器の漏洩、某国に尻尾を振って国民には真相を隠し続ける政府、享楽的に犯罪を繰り返す犯罪者など、現在でもまったく色あせていません(進歩がないともいう…)。
むしろ美知夫の得体の知れないキャラクターとその犯罪は、現代でこそ通用するのではないでしょうか

美知夫と賀来の関係の描写に期待していなかった…といったら嘘になりますが、そちら方面はいたって普通。
手塚治虫は健全な人なんだと感じました。もちろん彼にも確かにどろどろした部分はありますが、少なくともこの方面ではないという気がします。石ノ森章太郎が描いてたらすごいやらしくなった気がする(もちろんいい意味で)。

イニシアチブをとりたがる男同士、人間同士の関係の描き方としてはリアルです。ただし、BL風味を期待すると肩透かしを食うかも。(それでも補完できるのが真の腐女子ということか…すみません私は修行が足りません)

現代に蘇るピカレスクロマン、ぜひ漫画と映画版、両方とも見比べてみてください。

映画『MW』の公式サイトはこちら。
http://mw.gyao.jp/
待て、しかして希望せよ!

投稿者:yura
 

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