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・ rinx

どうも、rinxです。
最近あまり聞きませんが「看板娘」という言葉があります。メイドさんやナースのように直接の萌え属性はないですが、ある種「看板娘」という響きには独特の甘酸っぱさがあり、そういう意味では非常に萌え的なポテンシャルを秘めていると思うんですよ。そのうち秋葉原に看板娘喫茶とか出来ませんかね。……あ、無理ですかすいません。

さて、そんなこんなで今回のレビューは元気でかわいい看板娘のコメディー漫画、ずばりその名も『無敵看板娘』です。

無敵看板娘 1 (1) (少年チャンピオン・コミックス)

■ あらすじ
エプロンと三角巾がトレードマークの鬼丸美輝は、母が経営する「鬼丸飯店」の看板娘。料理ができず掃除も皿洗いもからっきしな彼女ではあるが、圧倒的なバイタリティと人並みはずれた戦闘能力を持ち、真っ直ぐな表裏のない性格からしても看板娘にふさわしい存在である。
彼女の店がある花見町商店街には、八百屋「八百黒」を切り盛りする戦隊オタクの太田明彦、パン屋「ユエット」のライバル看板娘・神無月めぐみ、更には自称ライバルの西山勘九郎など濃いキャラクタだらけ。今日も花見町ではそんな彼女たちの大暴れが繰り広げられる。

■ みどころ1 卓越したキャラクターメイキング
基本が一話完結の作品なので、あらすじと呼べるものは特になし。ただ平均的なコメディー、ギャグ漫画に比べて飛び抜けているのはキャラクターの個性。ぱっとみた感じは主役の美輝もかわいい看板娘なんですが、実はチンピラヤクザを秒殺できるほどの猛者。作者自身が「ゴジラをモデルにした」と語るだけあって、並の武闘派じゃありません。どのキャラも基本的には「○○だけど○○」っていう設定が光ってます。そんなわけで主要キャラクターの概要を見てみましょう。

・鬼丸美輝
 かわいい看板娘だけどゴジラ
本編主役にして鬼丸飯店の看板娘。即興の格闘技“鬼丸流葬兵術”を操る。20歳前後の健康的な美少女なのだが、容姿とは裏腹に喧嘩っ早く怖いものなしの性格。唯我独尊自己中を地でいっている。酒を飲むと性格が反転、とても気弱でおしとやかになる。「連載第一話でゲロを吐いたヒロイン」として漫画ファンの中では認知度が高い(かも)。

・神無月めぐみ
 清楚な看板娘だけど腹黒
鬼丸美輝のライバルにして、お向かいの競合店・ユエットの看板娘。昔から美輝と知り合いで、金髪縦ロールの髪型に大きなリボンという美輝とは対極の清楚系なお嬢様。その華麗な見た目に反して性格はかなり歪んでいて、「卑怯・自意識過剰・高圧的」と三拍子そろった恐ろしい人。百発百中の“フランクフルト串投げ”や毒物混入など、戦闘スタイルも近接タイプの美輝とは対照的である。酔うと広島ヤクザ風の性格になる。

・太田明彦
 常識人だけど戦隊オタク
鬼丸飯店の隣で八百屋を営む青年。本作有数の良識派で、本編ほとんどのツッコミ役&巻き添え被害者。ただしヒーロー戦隊ものにはめっぽう弱く、最終回で主役が死ぬ時には自分も後を追おうとするなど大きく暴走する傾向がある。なおアニメ版の声優は『ガンダム00』でガンダムへ偏執的な情熱をもったグラハムさんの人。

・西山勘九郎
 好青年だけど復讐バカ
大学を出た後も定職に就かず、長年かけて美輝にケンカでリベンジを誓う青年。語尾に「~ニャ」が付く。果たし状を出すのが趣味のような男で、いつも美輝に負けるが、その戦闘力はヤンキーに囲まれても瞬殺するほど高い。復讐に燃える以外はけっこう性格が良く、筋の通らないことが大嫌いな熱血漢。彼の台詞は全体的に心に響くものが多く、結果としていろいろな人や動物から好かれることになる。なおアニメ版の声優は金色の勇者王だったり、アイナと添い遂げたガンダム乗りの人。

・敏行
 小型犬だけど猛獣
鬼丸飯店のお得意さん、遠藤家で飼われている犬。つぶらな瞳と小柄な体型でごまかされそうだが、本編中において美輝と互角に闘える貴重な存在。飼い主の若菜には忠誠を誓う騎士道の持ち主だが、それを害するものはたとえ何者であっても容赦しない。本編登場キャラのほとんどにとって天敵だが、唯一勘九郎には友情を感じている節があり、勘九郎の特訓の手助けをしている。

・鬼丸真紀子
 おかみさんだけど最強
本編最強キャラクタにして美輝の母親。性格はよく、料理はうまく、暴走することの少ない、娘と呼べる年齢でさえあれば彼女こそが看板娘だっただろう存在。若かりしころはかなりの美人で、最終話直前に出たヤングバージョンはかなり個人的にツボ。四股を踏んだだけで大地を割る、圧倒的なパワーは美輝を遥かに超える。下手をすれば『バキ』の範馬勇次郎、『ARMS』の高槻巌と比肩する存在。多分彼女と互角に戦えるのは『浦安鉄筋家族』の花園勇花くらいだと思われる。まさに母は強し(うまいことを言ったしたり顔で)。

・茅原先生
 熱心な教師だけど自殺志願者
近くの高校で教師をつとめる女性。本編中で最も怖い顔をしたキャラクタだが、鬼丸飯店のラーメンを食べている間だけ朗らかな美女の顔になる。普段の凶悪な顔ゆえに周囲から怖がられており、よく自信喪失して自殺未遂を繰り返す。実は意外にまともな教育方針を持っており、言動も(自殺癖を除けば)有数の常識人。

■ みどころ2 お色気シーンに頼らない硬派な魅せ方
個性派なキャラクター陣の次に注目したいのは、およそ5年間にわたって連載(続編含む)されながら「お色気」なシーンがほとんど登場しなかったこと。どんなに美輝が短いスカートで暴れてもパンチラなどせず、小学生の水泳を除けば水着・海水浴シーンも皆無。あざとい読者サービスで人気を狙う漫画が多い昨今、気持ちいいくらいにクラシックな姿勢を貫いています。「エロなどに頼るものか、台詞のキレや展開の妙味で楽しませてやるぜ!」と言わんばかりに作者の情熱が伝わってきます。

だからといって萌え要素がゼロかといえば、そうでもありません。酒に酔って性格反転した時の美輝はかなり色っぽい表情ですし、ちょっとした場面でグッとくるところが多々あります。薄味の食事に慣れたら、わずかな味の違いにでも敏感になれる――といったところでしょうか。ここまで作者が計算したのかは分かりませんが、結果として十分なコメディ要素と微量の萌え成分が絶妙のマッチングをみせ、稀有な作品に仕上がっています。

■ みどころ3 どこから読んでも楽しい
一話完結なので、何巻の何話から読み始めてもほとんど違和感なく楽しめます。少し困るのは新キャラが登場した時くらいなものでしょう。たまに前後編に分かれたエピソードもありますが、それさえ独立した話として成り立っているのは驚異的。極端なハナシ、続編の『無敵看板娘N(ナパーム)』から読み始めてもいいほどです。細かいところまで計算し尽くした作者の構成力には本当に頭が下がります。

■ メディアミックス情報
2006年にはテレビアニメ版が放送され、DVDは全6巻が出ています。

無敵看板娘 1〈初回限定版〉 [DVD]

放送は12回、毎回2話が進行するため全24話の構成。キャラクター設定や外見、話の本筋などは原作漫画がいい感じで尊重されたようで、原作ファンなら違和感なく楽しめるかと。マジシャンの辻や婦警の権堂さんが背景キャラになったり、茅原先生の自殺癖が「すぐ辞表を出したがる癖」に変わるなど微妙なアレンジがされている模様。DVDの第2巻は前代未聞の“オカモチ仕様”でリリースされ話題になりました。

また、アニメ版放送と前後してWebラジオ『素敵看板娘』も配信。美輝役の生天目仁美と、めぐみ役の小清水亜美がパーソナリティを務めました。聴いた人は少ないと思いますが、ほとんどメディアへの露出がない原作者・佐渡川準がゲスト登場した回もあります。彼の実家の話(空手道場を営んでおり自らも師範代の腕前)とか、作品づくりにかけるストイックな姿勢などが拝聴できる貴重な資料でした。ラジオCDの発売は今のところ確認できておらず、DVDの初回限定特典に付いていたのみ。プレミアが付きそうですね。

■ 続編情報
本作は全17巻でひとまず終了していますが、すぐ後に直接の続編『無敵看板娘N(ナパーム)』が連載されました。おそらく時期的にみて「アニメ放送中に本編が終わってるのは困るんじゃないの?」という制作者サイドの意向が尊重された結果なのでしょう。この『ナパーム』版の最終巻あとがきでは「当初4話で終わるはずだった」と作者手書きのコメントが付いています。

無敵看板娘N 1 (1) (少年チャンピオン・コミックス)

とはいっても作者が佐渡川準なのですから、続編にも手抜きはまったくなし。主要キャラの多くはそのまま前作を引き継ぎ、新たなライバルとして大型スーパー「テッコツ堂」の個性的なメンツが登場。テンションを落とすことなく全5巻のボリュームで描ききりました。こっちもお勧めです。

■作品データ 『無敵看板娘』
・作者  :佐渡川準
・出版社 :秋田書店
・刊行状況:全17巻
※続編の『無敵看板娘N(ナパーム)』は全5巻

■評点 - 『無敵看板娘』
画力  :★★★★
物語  :★★★★★
独創性 :★★★★
総合評価:★★★★★

■関連サイト
アニメ版 公式サイト

 

投稿者:rinx
 
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どうも、rinxです。
今月で創刊1周年を迎えたジャンプスクエアが依然好調のようですね。前身の「月刊少年ジャンプ」を引き継ぎつつ実力派の漫画家をズラリと揃え、『CLAYMORE』『ロザリオとバンパイア』『紅』などアニメ化漫画も多数。2009年には許斐剛自身の手による『テニスの王子様』続編スタートが決定していたり、この先も期待できます。

さて今回はそんなジャンプスクエア作家陣の一人、かずはじめの連載デビュー作『MIND ASSASSIN(マインドアサシン)』をレビューしたいと思います。

Mind assassin (1) (集英社文庫―コミック版)

■あらすじ
第二次大戦中、ナチスドイツによって作られた能力者「MIND ASSASSIN」。触れるだけで相手の記憶や人格を破壊する恐るべき能力は、日本で開業医を営む奥森かずいにも受け継がれていた。かずいは医師としてさまざまな苦悩を持つ人々と触れあい、ある時は耐え難い記憶の消去、またある時は許されざる悪意に対し“暗殺者”の力をもって向き合う――。
単なる精神の癒やし(ヒーリング)にとどまらず、消去や破壊といった領域まで踏み込んだ異色の人間ドラマ作品である。

■作品テーマ
ほぼ全編に渡り、悲しみと葛藤、そして「消せない過去」に対する贖罪。そんな重厚なテーマに満ちた作品です。
主人公であるかずいは、MIND ASSASSINの能力をコントロールしながら使うことで、数多くの過去に縛られた患者に今を生きるための力を与えていました。毒として生み出された暗殺者の力を人のために役立てようとしていたわけです。
しかし悲しいかな、すべてがハッピーエンドで終わらないところが本作の特徴的なカラー。いくら記憶を消去しても彼らは過去から逃げることがかなわず、その多くの場合が悲劇的な結末を迎えます。

では救いはないのか? いえ、救いはあります。
忘れることで幸せを取り戻した「つもり」の患者は、本来の姿ではありません。たとえどんなに辛い記憶であっても、それに対して向かい合うことは非常に価値のあることであり、どんなときでも過去を切り捨てる行為は果たして正しいのか? それを読者へあらためて考えさせるメッセージ性が感じられます。

後半は別の暗殺能力者と対決するなど、ジャンプの悪癖である「バトルもの」に転じた部分も見られましたが、その作品に込められたメッセージすべてが否定されるほどのものではないでしょう。

■印象的なエピソード
淡々としながらどこか殺伐としたストーリーの中で、誰も死ぬことのない(そして個人的に大好きな)エピソードはマッチ箱の話。ネット上でも検索すればすぐ出てくるのですが、さまざまな読者に衝撃を与えた回であることは明らかでしょう。

夫の素行の悪さに悩み、かずいに依頼して精神を破壊させた妻が、幸せだったときの何気ない日常だった音が目覚めさせる。……あらすじはこんな感じです。
このレビューを書いてて頭に浮かんだのが、中川翔子の歌う『Happily ever after』という曲。TVアニメ『天元突破グレンラガン』の挿入歌といえば知る人ぞ知る名曲ですが、いやBGMとしてかけたら本当に泣けるくらいのベストマッチっぷりです。
歌詞の一部じゃありませんが“幸せはいつだって失ってはじめてわかる”という当たり前のことに気づいた夫の、必死な行動は妻には届かなかった。でも、妻は夫のことが嫌いなわけではなく、嫌いになったわけでもなかったにもかかわらず、なかなか目覚めませんでした。

最後に妻を目覚めさせたのは小さな音――夫が必死に妻にかっこつけようとしてやっていた仕草「マッチ箱を振る」。たったそれだけのことが彼女を目覚めさせたのです。
未読の人には何のことかわからないかもしれませんが、それは二人にとって非常に大事な過去を象徴したものであり、MIND ASSASSINの力をもってしても消去できなかったもの。
その展開、構成の見事さに当時学生だった私は鳥肌を立たせたのを覚えています。

■漫画家・かずはじめの評価
ヘヴィなストーリーと人間関係、ヒトの負の感情にまで向き合った本作ですが、絵はかなり独特で、意外にも正直『真っ白』です。メジャー作品でたとえるなら、『修羅の門』の川原正敏とかあんな感じ。あまりに白すぎて、逆に新鮮ですらあります。当時の作者に細かく描き込みする余裕(と経験)がなかったのでは、と見ることもできますが、これはあくまで一面的な解釈。川原正敏の画風と同じように“何もない空間に何かが満たされている”ような感覚は、個人的に読んでいてけっこう好きでした。

今では作者のかずはじめ氏も週刊少年ジャンプ連載だった『明稜帝 梧桐勢十郎』『鴉MAN』『神奈川磯南風天組』を経過して、ジャンプスクエアで『Luck Stealer』を連載中。特殊な能力を持った主人公設定、守るべき立場にある弱い者から逆に救いを与えられている構図など、現在の連載作は『MIND ASSASSIN』に通じるものを感じます。

ちなみに弟子の中には『テニスの王子様』で有名な許斐剛もおり、2009年からは彼もジャンプスクエアへ移籍が決まっています。こうして長い時を経て師弟が競演するわけですから楽しみで仕方ありません。

個人的には『Luck Stealer』は『MIND ASSASSIN』の時に比べて少し評価が落ちますが、デビュー作にして最高傑作である『MIND ASSASSIN』と比較すること自体が野暮というもの。あの完成度が神懸りすぎていたとしか言いようがありません。

さて結局のところ本作は明確に完結しておらず、私たち読者はかずいたちの終幕を知ることはできません。ですが以前に読んだ書籍で、作者は「『MIND ASSASSIN』は最も素で描ける作品。逆に言えばそれに甘んじていては殻を破れないのでいろんな作品を描いていきたい。いつか『MIND ASSASSIN』は完結します」と語っていました。昔からのファンとしては本作の復活を、切に希望しています。

■作品データ 『MIND ASSASSIN』
・作者  :かずはじめ
・出版社 :集英社
・刊行状況:全5巻(集英社文庫は全3巻)

■評点 - 『MIND ASSASSIN』
画力  :★★★☆☆
物語  :★★★★★
独創性 :★★★★
総合評価:★★★★

 

投稿者:rinx
 
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2007年12 月10日 月曜日

・猫田 峰雄(Rinx)

当ブログ『MANGA SPIRITS』のライター。

rokuさんに弟子入りして早数年、フリーライターを気取るも、実際はただの会社員。
少年漫画から少女漫画、ほぼあらゆる漫画を雑食的に読み漁る自称オタク・マンガスキー(ロシア名)。
でも萌え系とBL系だけは本能が拒否するため読んでいるだけで悶死します。

連載中のイチオシ漫画は『トリコ(集英社/島袋光年)』。
最近で最も衝撃を受けたのは『ひぐらしのなく頃に 罪滅し編(スクウェア・エニックス/鈴羅木かりん)』。
嗜好はかなりマニアック。おそらく漫画オタク度でいうならこのサイトでも有数。
マイナー系作品が中心の紹介になると思いますが、それで現物に触れていただけたら幸せで失神します。

ちなみに好きなジオン系MSは、ゲゼだといったら笑われました。

 

投稿者:rinx
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