マンガ好きライター陣が執筆する日刊マンガ(漫画)ニュース&レビューブログ!

絶版のレビューたってアナタ、絶版なんだから書店にあるわきゃないんで、それを勧めるってなあどーいう了見だえ!?などとお怒りのムキもおありでしょうが、まあまあ、世の中絶版本を読む手段なんて、合法的に色々とあるワケで。古本屋で買ったとか、オークションで手に入れたとか、朝まだ早き夜明け前にゴミ収集場へ行ったら運命の出会いをしたとか(実話)。

ま、そんなこんなであなたと出会うかもしれない絶版本を、たっぷりの思い入れという不純物とともに、不定期にご紹介する【絶版本のススメ】。第1回は、知る人ぞ知るとはいえ、知ってる人はぜっっっっったい的に少ないであろう『たいした問題じゃない』。著者:速星七生、出版社:朝日ソノラマ、大好きだサンコミックス!である。

Amazonには画像もないので、手持ちのコミックスの表紙をデジカメで撮ってみるのである。

『たいした問題じゃない』コミックス

 

■作品データ 『たいした問題じゃない』
・作者  :速星七生
・出版社 :朝日ソノラマ(サンコミックス)
・発行日 :昭和57年6月25日 初版発行
・刊行状況:1巻のみ(絶版)

 

『たいした問題じゃない』は、1981年9月から1982年3月まで月刊DUOに連載された、スコットランド・ヤードが舞台のコメディ。

メインキャストのひとりめは、黒いアイパッチに頬傷のマッキアン主任警部。それから自称「歩く百科辞典(ケーキつき)」で趣味人のアイザック・レヴィン。最後に、とこしえに長い由来を持つハートのピンをつけたダミアン警部。この3人が、毎回小気味よいセリフとともに、テンポのよいギャグを繰り広げてくれるのだ。

独特のクセのある絵柄は、読む人を選ぶように思えるが、そのためか、25年経ってもあまり古くさく感じないという利点がある。(と読み返して昨日思った。)
もちろん、人をくったようなキャラクター達や、質の良いコメディ映画を観ているようなしゃれた展開も最高だ。

ある日突然シリー街のすべてを逆さにした犯人とは…。

4時からの講演をすっぽかした英国至上主義者の居る場所とは…。

5年間に3人の妻と死別したヘンリー卿の秘密とは…。

これらの謎に、小粋なオチをつけて読ませてくれる速星七生はえらい!
…もっとも作者本人は、品がなくてセリフがクサくてオチは苦しい、と言っていたが(笑)

また、ななめ上空22.5度あたりからのシニカルな視線は、みずからの絵柄さえツッコミの対象とする。階下に住むパワフルな女優の卵に部屋を荒らされて、涙にくれるアイザック君。とりだしたハンカチでちーんとやった彼に、マッキアン警部がかけた言葉は、

『たいした問題じゃない』ギャグ

作者はかなりの英語通で、セリフが英語(たぶんスラング)で書かれていたり、キーツの詩が頻繁に引用されていたり、ドイツ語の名詞の文法上の性が謎を解くカギになっていたりと、かなりハイブロウなマンガでもある。んが、そんな格調の高さを微塵も感じさせないところが、速星七生のすごさなのだ。(言っておくが、褒めているのである。)

『たいした問題じゃない』「愚国礼讃」

コミックスに同時収録されているのは、デビュー作の『愚国礼讃』
タイトルこそエラスムスの『愚神礼讃(痴愚神礼讃)』のパロディだが、内容はむしろ井上ひさしの長編小説『吉里吉里人』を下敷きにしているといえる。

1981年1月に分厚い単行本として新潮社から刊行された『吉里吉里人』は、ある日突然東北地方の小さな村が「吉里吉里国」を名乗って独立宣言するというストーリー。一日半の日本国との攻防が834ページ(上下二段)に渡って丹念に描かれており、日本各地にミニ独立国ブームを巻き起こした怪作だ。

『愚国礼讃』のほうは、すでに明治時代にどさくさに紛れて独立してしまっている「大野田王国」が舞台。日本の大学に留学している耕作のもとに、帰国して王位を継ぐよう知らせが入る。ジョークだと思って「帰国」につきあった耕作の友人・百丸が見た大野田王国とは…。

観光客目当てのアサハカな各地の反応とは対照的にこの作品は、ギャグがちりばめられたなかにも味わい深いラストとなっている。

 

速星七生のコミックスは、『たいした問題じゃない』の他には『ナナオの症候群(名探偵テームズ)』(1)(2)のみ。

『ナナオの症候群』という連載を月刊DUOでやっていたのだが、サブタイトル『名探偵テームズ』シリーズが一段落してコミックス化されたため、こんなややこしいタイトルになっているのだ。

その『ナナオの症候群』の連載は、次の『聖者の行進』シリーズの第一回が掲載されたところでDUOが休刊。速星七生はそのままマンガ家をやめてしまったとのこと。

ネットで作者本人が書いたとみられるコメントによると、公立高校の教員をしててバイト禁止だったため、掲載誌の廃刊とともに漫画から足を洗ってしまったらしい。3冊のコミックスで稼いだお金は、イギリス車のミニクーパーを購入して記念にしたとか。(えーー、戻ってくださいよお。今でもサイトがあったら読みにいくのにーー。)
→まんぱら No.385速星七生

 

なににせよ、埋もれてしまうには惜し過ぎるマンガなのだ。

コメディ映画が好きな方、英国ファンの方は特に(!)、

古本屋で見かけたらレジへ直行

おススメするものである。

…損はさせませんぞ?

 

『たいした問題じゃない』
『ナナオの症候群(名探偵テームズ)』(2)

【公式サイト】
朝日新聞出版

【参考サイト】
まんぱら
まんががいっぱい☆らいぶらり

 

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絶版本に限定してなのですが、試験的に中のマンガの画像のキャプチャ−をのせてみようということになりました。マンガという性質上、レビューをしていて伝わりづらい部分があっても、絶版のため一般書店で手に入れることができないからです。
著作権法において引用として規定されている、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲を越えないよう留意し、またオチなどではなく、ストーリ−上支障がないと判断した部分のみ、使わせて戴こうと考えております。
可能な限りご連絡させていただきますので、ご確認ご検討をしてくださるようお願い申し上げます。

本作『たいした問題じゃない』に関しましては、発行元の朝日ソノラマが廃業された時点で、既に絶版になっておりましたこと。朝日ソノラマの出版物の権利を引き継がれました朝日新聞出版(当時は朝日新聞社出版本部)のサイトで配布していらっしゃる「朝日ソノラマかr引き継いだ本 全点リスト」に『たいした問題じゃない』が掲載されていなかったこと。これらの事情を考慮いたしまして、ご連絡を控えさせていただいたものです。
作者や出版社からのご一報があった場合は、きちんと対処させていただきます。

 

投稿者:AKAE
 
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