炊飯器を稼働しながら仕事していたらブレーカーが落ちる、うっかりトイレで目測を誤る、百円ショップでネギが1本しか買えない。……こうした「ツイてない日」は誰の日常にでもあるだろう(いやに具体的な例だが)。
だが、その程度でいちいち周囲に当たり散らしているようでは社会人失格。ストレスは上手に解消しよう。そんな心がトゲトゲした日に読みたいのは、一発で心をホンワカさせてくれる癒し系の漫画たちだ。
いや冗談でも何でもなく。
かくいう私自身、このタイプの漫画を常備している一人である。アニマルセラピーがあるんだから、別に漫画セラピーが存在しても良かろうて。
その代表格として紹介したいのが『貧乏姉妹物語(小学館/かずといずみ)』。えらく直球ド真ん中なタイトルだが、別に姉妹が極貧にあえぐ悲しい話ではないのでご安心を。
まずは、やんわりと作品概要を――。主人公は9歳と15歳の元気で無垢な姉妹。母親は次女を産んですぐに病死。父親はギャンブルで借金を作って蒸発。身寄りのない姉妹は築40年のボロアパート(フロなし1K)に住み、姉が新聞配達などのアルバイトをして暮らしている。うーん、今どき珍しいほどパーフェクトな不幸設定だ。
しかし、作中にはそんな悲壮感がまったく漂わない。
春は自室の窓から満開の桜を楽しみ
拾ってきた古いテレビを仲良く使い
土手で草花を愛でながら夕飯の食材(野草)をゲット。
お風呂屋さんで買った1本のビン牛乳は二人できっちり半分こ。
姉妹にとって最高の贅沢とは「いつも一緒にいること」。
なんというか、読んでいるこっちが恥ずかしくなるくらい笑顔と愛情に溢れた姉妹の日常が展開されているわけで。結婚しても不思議じゃないラブラブっぷりだ。実際、日本で唯一のガールズラブ専門漫画誌『コミック百合姫』では、百合系漫画として紹介されたこともあるほどだし……。
時にはちょっとした誤解から姉妹喧嘩したり、気難しい同級生や大家さんに振り回されたりもするけど、この作品に根っからの悪人というのは存在しない。最後にはみんな仲良くなり、いつもハッピーエンドに終わる。とりわけ姉妹のラブラブっぷりに関しては結婚しても(以下略)
絵柄にもいっさいクセがなく、すぐ誰にでも馴染むことができる。さらに作者の特徴といえる超美麗なカラーイラストは単行本でも健在。新規のカラー漫画が単行本用に書き下ろされたりして、「これだけカラーページを使って印刷コストは回収できているの?」と不安になってしまうほど。
やや序盤の巻で誤植が多いのは気になるところだが、これは作者の責任ではなく担当編集者が悪いだけ。むしろ伏線をいくつか回収しないまま全4巻で終わってしまった、その短さこそが残念に思える。
ともあれ読んでいると癒されるのはもちろんのこと、「本当の豊かさって何だろう?」とじっくり考えさせられる作品でもある。
ちなみに原作に加え、本作はドラマCD→テレビアニメ と順調にメディアミックスも展開。ドラマCDは未聴だがテレビ放映版はけっこう面白かった。いずれにせよ原作版は、積極的にお勧めしたいと言い切っておこう。
なお、今回からはレビューに評点(↓)を付けてみたので、よろしければご参考に。
■rokuによる独断評価(5つ☆が満点)
画力 :☆☆☆☆☆
物語 :☆☆☆
独創性 :☆☆☆☆
総合評価:☆☆☆☆☆

