時は20XX年…時の権力者により、日本の民衆はラーメンを食べることが禁じられていた。これが世に言う「禁麺法時代」である!!しかし、どうしてもラーメンを忘れられない人々の前に、現れた救世主!銀色の箸を操って、あらゆる物質をラーメンに変える錬麺術師ラビリンスと相棒の蛇トリスは、法の網をかいくぐって依頼人にラーメンを提供し続ける……。
( 『ラーメン・ラビリンス』秋田書店/市東亮子/1993年12月発行)
かつてこれほどバカバカしいラーメンマンガがあっただろうか!?
いや、ない!!
しかもこれ、少女マンガなのである。
今どき少女マンガ=お目々キラキラと思っている御仁は少ないだろうが(いるところにはいるらしい)、この荒唐無稽さが華やかな少女マンガの世界にあっても違和感なく存在しているところが凄い。
高級素材で作られた椅子の腕は、錬麺術師ラビリンスの箸に挟まれると「ふかしたてのイモのようにポクッと」折れ、器のなかで解きほぐされて、沁み出たスープとともにラーメンへと変容していくのだ。
そのコク、そののどごし、弾む歯ごたえ…。
元が椅子であろうが便器であろうが(笑)、出来上がるのは死ぬほど旨そうなラーメンなのである!あああ食いたい!食ってみたい!
ストーリーは、ラーメン迷宮の麺…もとい面々(ラビリンスたち)を縦糸に、ラーメンGメンに隠れ麺食い党、秘密結社「めんそーれ」といったカルト宗教や国家体制を横糸に、そしてその道の男女にはタマラないらしい、半ズボン美少年のふとももを飾り糸に織り上げられていく。(断っておくが、私自身はその道の人ではない。むしろ白衣と眼鏡がキーアイテ…ゲホゲホ)
作者の市東亮子は、アクション学園もの『やじきた学園道中記』やファンタジー活劇もの『BUD BOY』あるいは青春ものからヤクザもの、幻想と現実の入り交じった哀しい作品まで、幅広いジャンルを描いているマンガ家だが、本作品ではなにかリミッターが外れたとしか思えないくらい、突拍子もない設定が詰め込んであって楽しい。(同系列作品『バトル・フィンガー・ファイブ』)
もっとも作品自体は厳しい規制のもとに製作されていて、それは同コミックス収録の「即席拉麺迷宮製作秘話」にも描かれている。なにせ題材が題材だけに、メーカー各社に使用許可を取らなくてはいけないからだ。
しかしこのマンガはまた「王風麺(ワンフーメン)」や「華味餐庁(カミサンチン)」「楊婦人(マダム・ヤン)」「チャルメラ・デラ」「大吉」など、もはや発売されていない懐古メンがいかに旨かったのかを、文字どおり筆舌つくして語ってくれる。お蔭でそれぞれのインスタントラーメンは、その名称と味が永久保存されたのではないだろうか。
さて夜も深まり、そろそろ小腹がすいてくる時間である。
台所には袋ラーメン「うまいっしょ醤油味」が買い置きしてあるのである。
鳴き始める腹の虫、目の前に『ラーメン・ラビリンス』、そして(ここ5年は一本槍で購入している)「うまいっしょ醤油味」とくれば、あとは黙って鍋に550ccの水を入れて火にかけるしかないではないか!?
罪なヤツだぜ、『ラーメン・ラビリンス』。
悪魔の囁きに負けた私はそうつぶやきながら、本日4食めとなるインスタントラーメンを作るために立ち上がるのだった……。(合掌)

