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末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(1)
末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(2)

■末弥純とマンガ

現在イラストレータ−として名を馳せている末弥純だが、実はその昔、マンガを描いていたことがある。
今はなき朝日ソノラマから1986年に出版された「BATTLE MACHINE」というロボットもののマンガ誌。これに作品を寄せていたのだ。「BATTLE MACHINE」各号に掲載されたのは、『砂漠の女狐』『カペルドーニャの鉄騎士I ボウイング・ビートル』『カペルドーニャの鉄騎士II スカラ・ブラエ』の3作。翌年1987年10月に、シリーズ・フルメタルジャケット1 『末弥純作品集 カペルドーニャの鉄騎士』として(おそらくは加筆されて)まとめられ、発行されている。

 

■『カペルドーニャの鉄騎士』

『カペルドーニャの鉄騎士』のストーリーはというと、

※以下、ストーリーに関してネタバレがあります。

現王の死によって混乱をきたした惑星ライユカーム。若すぎる継承者につけこんだ共産圏の内政干渉を危ぶみ、惑星連合は軍事介入を決意。継承者カペルドーニャの暗殺が指示され、ボウイング・ビートルが首都を急襲する…。

この後、引き上げに失敗した傭兵のディトゥーが、カペルドーニャと会い、王権の奪取を助けるという展開になっていく。実は女性であるカペ様は、今で言うところのツンデレ(まあカペ様、王族の娘ですしね)。身分をやつして敵方の祝宴に踊子として潜り込むなど、ファンタジー的に楽しいエピソードもあって、末弥ファンならぜひ読んでおきたい1册だろう。

タイトルの「鉄騎士」は、長い間ライユカームの首都にご神体として祀られていた大型バトロイドのこと。保護の名目で乗り込んできた共産圏S・Hとの決戦で、旗艦を撃つために稼働させた。

『カペルドーニャの鉄騎士』を読んで、あらためて感じるのは、やはり末弥純はイラストレータ−であるということ。1コマが1コマがイラストのようにきっちりした構図で描かれていて、たいへん美麗なのだ。これは天野喜孝「アモンサーガ」や安彦良和「アリオン」にも通ずるテイストといえるだろう。

 

ちなみに『シリーズ・フルメタルジャケット』は1~4まで発行されている。

●シリーズ・フルメタルジャケット 1
『末弥純作品集 カペルドーニャの鉄騎士』
1987年10月発行

●シリーズ・フルメタルジャケット 2
『岡田有章作品集 STARDUST IN A BOTTLE(スターダスト イン ア ボトル)』
1987年10月発行

●シリーズ・フルメタルジャケット 3
『横山宏作品集 ロボットバトルV(ファイブ)』
1987年11月発行

●シリーズ・フルメタルジャケット 4
『小林誠作品集 DRAGON’S HEAVEN(ドラゴンズヘブン)』
1987年12月発行

イラストレーターである末弥純を筆頭に、美術監督でイラストレーターの岡田有章(おかだともあき)、モデラーでイラストレーターの横山宏(よこやまこう)、メカデザイナーでアニメ監督もするイラストレーターの小林誠といった面々が描いたマンガを集めた『シリーズ・フルメタルジャケット』。マンガ家以外が描いたロボットマンガというコンセプトなのだと推測される。80年代後半は、ゲームの台頭によってロボットアニメが冬の時代に突入したといわれているが、ある種の「浸透と拡散」が起こっていたともいえる。その証拠が、こういった企画なのではなかろうか。

この作品集以来、末弥純はマンガを描いていない。…少なくとも公式では。

『末弥純原画展』展示作品+人

■末弥純 原画展に立ち戻って

デビュー作が、SF作品のなかのファンタジー世界のイラストだった末弥純は、その後もSFやファンタジーと密接に絡んだ作品を描き続けている。

光と闇の両方が煌びやかに、あるいは背徳の香りをともなって描かれる末弥純の作品。荘厳で一種宗教的ともいえるその絵は、添えられた小説やゲームの世界にリアリティを与え、読者の想像を補って説得力をもたせる。氏の絵が直接的・間接的にゲーム界やマンガ界、アニメ界に与えた影響は、ひとことで語れないくらいに大きいのだ。

1~4までの原画展は、そういった作品群の紹介というコンセプトで開催されていたが、さらに第5回めの『the Works』「これからの末弥純を見据えた新作紹介」という構想に進んでいる。

ライフワークの発表の場としても、ファンとの橋渡しという意味でも、原画展の果たす役割は重要だ。

末弥ファンとしては、SFよりの機械の多いイラストなども見たいし、菊地秀行モノでも魔界都市以外の大人っぽい絵も見たい。そして新作もたくさん見たい。…なんて、ついつい我が儘なことを望んでしまうが(笑)。

 

末弥純の新作を見ることのできるこの原画展、華麗な油彩画を手に取って観賞できるよい機会でもある。

まだ足を運んでいない末弥ファンは、『ウィザードリィ』マニアや菊地フリークは、(そしてSFファン、ファンタジー愛好家は、)一度訪れてみるのはいかがだろう。

かならず心を揺らす絵が見つかるはずだ。

 

 
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末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(1)
末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(3)

ということで、これだけ紹介したなら、行かざるをえないでしょう!
というか行きたい。行かせてください。むしろ紹介前から心は原画展なわけで、初日の16日に突撃しましたともさ、『the Works』

『末弥純原画展』Gofa看板

■末弥純 原画展レポート・展示観賞編

初めて訪れたGoFaは、青山オーバルビルの2Fにある。正面玄関から入ると左に見えるエレベーターの、さらに左手にある非常階段(扉が閉まっている)を使わねばならない。初心者にはちょっと取っつきにくいかもしれないが、エレベーターが止まらないのはセキュリティを考えてとのこと。

登りきってGoFaの看板の横を抜けると、原画展『the Works』情報(1)の最初に載せた絵と同じ、メタリックな天使のポスターがお出迎えをしてくれる。きれいな(AKAEの時はねv)お姉さんの受付を済ませると、いよいよ原画展だ。

『末弥純原画展』展示作品

中は思ったよりこじんまりとしているが、その壁面に末弥純の原画がところ狭しと並べられていた。…といっても、おのおのの絵が相殺しあうことなく、末弥ワールドを充分堪能できる配置。
さまざまな絵に混じって、『ウィザードリィ』のイメージイラストや、せつらやメフィストの原画、また『外伝10 幽霊島の戦士』の表紙のグインなどを観賞することができる。願わくば、すべての原画の横に詳細を記したプレートがあれば、もっと記憶をたぐり寄せることができて楽しかったかも。しかしそれは贅沢というものだろう。

今回の目玉は、ポスターにもなったメタル天使の油彩画と、描き下ろしのモノクロ+金彩の美少女イラストの原画だ。少女イラストは、末弥氏による一発描きである。飾られていたのは複製だが、原画を購入することもできる。

1~4までの原画展は、挿絵やゲーム用に描かれた絵を紹介してきたが、第5回となる本展『the Works』のテーマは「氏の本質に迫る」。今まで末弥純がほとんどやってこなかった、「自分の描きたい絵を描く」という構想だ。これをライフワークの始まりと捉えて、氏にまだまだ眠る可能性を具現化してもらおうということらしい。

これは、前回の記事で提示した疑問

「氏はこの先いったいどんな絵を

描こうとしているのだろうか…?」

への答えになりはしないだろうか。

ちなみにそれを伝えられた末弥氏は、かえって何を描いていいかと物凄く悩んでいたそうだが…(笑)。

第5回を象徴するメタル天使の絵も、「自分の描きたい絵」を描いたらこうなったと考えると、いっそう趣きが深い。「メタル+神話+美少女」の絵だというのが、末弥純を語っているような、いないような、やっぱりいるような……(どっちだ!)。

『末弥純原画展』グインサーガ

 

■末弥純 原画展レポート・原画観賞編

さて、ファンとして愉しみたいという気持ちがあった欲深いAKAEは、とりあえず取材はおいといて、展示してある原画をじっくり見たり、机の上に置いてあるファイルをながめたりしていた。

そう、原画展スペースの真ん中には机があり、謎のファイルと白手袋が置いてあるのだ。ファイルに入っているのは主にモノクロのコピー。壁面に展示してある作品ではないが、これらには値段がつけられている。

そこへ係の人がやってきて、カタログファイルに載っている作品は原画を見ることができるという。カタログを指してこの絵が見たいといえば、すぐに持って来てくれるそうだ。せっかくなので、メフィスト医師を見せてもらうことにする。

かたわらにある白手袋をつけて待っていると、透明な袋で保護された末弥氏の、死ぬほど美しい(このあたり私情が入りまくってますが、何分にもご容赦ください)油彩画がやってきた。この状態で手に取って見られるだけでも天に召されるような幸福(このあたりにも私情が…)なのに、袋から出してくれるという。

『末弥純原画展』原画閲覧用ファイル

すみません、心で悲鳴をあげていました。

5分も手にしていられませんでした。

絵を見ながら「素敵ですね」と会話するのも、なにか飛んだりしないかとドキドキでした。

小心者のAKAEはすぐに絵をお返ししたわけだが、他にも見たかったらどうぞと言って、係の人は原画を戻すために立ち去った。うーむ、モノクロの挿絵イラストも見せてもらえばよかった。

 

■閑話休題

ここで声を大にして言いたいのは、ひとことも「一枚いかがですか?」などと言われなかった、ということだ。

実は昨今、マンガ家やイラストレータ−などの原画や版画を展示しては、それを法外な価格で売りつける絵画商法(エウリアン)が流行っている。

「絵は生活を豊かにしてくれる」「必ず値が上がる」「分割払いなら一日当たりわずかな負担で買える」だのと言葉巧みに誘い、長時間拘束して、買わないとなると「あなたのせいで貴重な時間を無駄にした」などと脅迫までおこなう。そして原画ならまだしも、いったい何部刷ったのかわからない版画や、版画と見せかけたオフセット印刷のポスターを、信じられないくらいの高額で売りつけてくる商法があるのだ。

そして(当たり前のことではあるのだが & AKAEの見た限りだが)、末弥純原画展ではそんな事態はありえないように思える。

係員は、閲覧中の原画についてどんなに親しげに語ってくれても、絵の購入を勧めるようなことは口にしない。おかげで購入について悩もうが、原画を目の当たりにして桃源郷に遊ぼうが、好きにできるわけだ。

これは、末弥純の原画にたずさわるスタッフたちに、強烈な自信があるからこそだと思う。

絵を欲しいひとは、自ら必ず申し出てくる。末弥の絵には、それだけ人を魅了するちからがある。だからスタッフがやるべきことは、末弥純の原画と触れる機会を、すこしでも多くファンに提供すること…。

そんな原画展スタッフの自負が、この環境をつくりだしているのではないだろうか。

末弥純の絵をこころおきなく愛でることができる、素晴らしい空間なのだ。

 

※絵画の悪徳販売について詳しく知りたい方は、以下のサイトへどうぞ
絵画商法(Wikipedia)
偽版画WORLD
絵画商法エウリアン(絵画商法ボイコット運動wiki)

 

 
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末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(2)
末弥純 原画展『the Works』8月16日から開催!(3)

ゲーム『ウィザードリィ』のキャラクターや小説『魔界都市ブルース』『グイン・サーガ』のイラストで知っている人も多いだろう。イラストレーター末弥純の第5回原画展が、8月16日から東京・青山で開催されている。

 

『末弥純原画展』トップ画像

末弥純 原画展『the Works』
~氏の本質に迫る~

■開催概要■
【会期】2008年8月16日(土)~9月7日(日)
【営業時間】11:00~18:00(会期中無休)
【会場】GoFa
    (幻想画廊:Gallery of Fantastic art)
【住所】東京都渋谷区神宮前5-52-2
    青山オーバルビル2F左ウイング
【入場料】500円(コーヒーチケット付き)
     小学生以下無料
【主催】GoFa
    (幻想画廊:Gallery of Fantastic art)

 

■末弥純の軌跡-1980年代

さて、まず末弥純の略歴を振り返ってみよう。

末弥純のデビューは1983年、『銀河の聖戦士 Part2 銀河十字軍』(田中光二著/トクマノベルズ)のカバーイラスト。SF作品だが、舞台はヒロイック・ファンタジーの世界だ。
(※文庫版は、星恵美子がカバーを描いている)

そして1986年7月、菊地秀行『魔王伝1』のカバーと挿絵を手掛ける。この後、『魔王伝2』『魔王伝3』と次々と描き上げ、別のイラストレーターによる『魔界都市ブルース 1 妖花の章』のカバー・挿絵の描き直しを含めて、『魔界都市ブルース』シリーズの新書と文庫ほぼ全てを担当。「秋せつらとメフィスト(せんべい屋と魔界医師、でも可)は末弥純だよね」というイメージをつくりあげた。
(※なお、菊地秀行作品関係の情報は『魔界都市新宿きくちファン通信』「作品リスト」及びAKAEの蔵書を参考に書かせていただきました。)

魔界都市ブルース〈1〉妖花の章 (ノン・ノベル―マン・サーチャー・シリーズ)

そして末弥純の真骨頂は、1987年12月に発売されたロールプレイングゲーム『ウィザードリィ』ファミコン版モンスターデザインを担当してから花開いたといえる。

『ウィザードリィ』は「テーブルトークRPG」+「指輪物語」+「神話のパロディ」+「モンティ・パイソン」(『POP-SITE』「末弥純画集 ウィザードリィ」に関するコラムから抜粋)というあまり日本に馴染みのない内容であった。末弥純によって描かれたイラストは、神秘的かつ魅力的で存在感に溢れ、剣と魔法とモンスターの闊歩する地下迷宮のイメージを、十二分に補ってくれた。このゲームが日本に普及し、2000年を越えた今でも新作を望むファンが多いのも、氏のイラストあってこその人気といえるであろう。
(※順番でいうなら、末弥純がモンスターデザインを担当した『ウィザードリィ』は、ファミコン版よりもMSX2版の方がちょっとだけ発売が早い。が、人口に膾炙したのはファミコン版の方といえる。)

末弥純画集 ウィザードリィ

この他にもS-Fマガジン(1986年11月号)に掲載されたウイリアム・ギブスンの『記憶屋ジョニイ』(日本語訳)の挿絵を担当している。このイラストは「ギブスン自身がとっても気に入ってる」とのことで、かの名作『ニューロマンサー』に登場する殺し屋・モリィのデザインに影響を与えている。サイバーパンクと呼ばれるギブスンの作品群抜きでは、『Akira(アキラ)』『攻殻機動隊』を語れない事実を考えると、末弥純の存在がマンガ界に及ぼした影響はかなり大きいということになる。
(※ギブスンの発言のニュースソースは『小谷真里エッセイ』の「 ワシントンファンダムに会った日」)

 

■末弥純の軌跡-1990年代

もちろん『魔界都市ブルース』シリーズや『ウィザードリィ』のヴィジュアル・デザインといった仕事は、90年代に入ってからも続いている。

その他には朝松健の『魔術戦士』シリーズ(大陸書房版)や、水野良が監修する『クリスタニア』シリーズ、嵩峰竜二『雷の娘シェクティ』シリーズのカバーと挿絵を手掛けたり、雑誌「LOG OUT」での挿絵とコラムを担当したり。

しかしなんといっても大きかったのは、1997年から栗本薫『グイン・サーガ』のカバー・挿絵を引き受けたことではなかろうか。6月発行の『外伝10 幽霊島の戦士』を皮切りに、グイン・サーガ三人めの絵師として、正伝57~87巻、外伝10~16巻の37巻分を担当。この交替は、初代絵師・加藤直之の重厚な油絵調の表紙を切望していたファンには、たいへん好意的に受け取られた。

 

■末弥純の軌跡-2000年代

末弥純 グイン・サーガ画集

2002年12月発行の『グイン・サーガ87 ヤーンの時の時』まで描き続けたイラストは、『末弥純 グイン・サーガ画集』としてまとめられ、早川書房から2003年9月に出版されている。

この他にも、2001年『末弥純画集 魄—199010-200101』、2004年『末弥純画集 烈妖月』、2006年『末弥純画集 ウィザードリィ』といった画集が次々に刊行されている。

また、2004年1月からは、今回の原画展『the Works』と同じ青山のGoFaにて、原画展を積極的に開催。2000年代に入ってからの末弥純は、いったん画業の集大成に入っているのでは、などとも思ってしまう。

氏はこの先いったいどんな絵を描こうと

しているのだろうか…?

末弥純画集 烈妖月 (ソノラマ・セレクション)

 

…余談だが、『魔界都市ブルース(マンサーチャー・シリーズ)』の挿絵は、2007年、末弥純から小畑健に替わった。小畑健は『CYBORGじいちゃんG』の頃から好きなマンガ家のひとりだが、この変更はちっともちっとも嬉しくない。昨今「小説の挿絵を人気マンガ家に描いてもらって部数を伸ばす」という流れがあるのは承知しているが、『魔界都市ブルース』の魂をそのまま具現化したイラストの末弥純を交替させるのは!いかがなものかと!やり場のない憤りを感じてしまうのだ。

 

 
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